はるか
ことこ

うすむらさきの雲の向こうで
夕日がしずむ
水羊羹の表面を
スプーンですくうように
なめらかな冷たさを泳ぐ

信号機が ぱっぽう、と
くりかえし諳んじて
歩道橋はひとの重みにたわむ
みんな きちんと弁えている
(お前はえらいね)
(と、そこにはいない野良猫に呟く)

かつて
湖のほとりで
生まれたものがあった
腕のうちがわの
いつだってしろい部分が覚えている
ねむらない夜は
寝返りをうつたびに
短くなる

紫陽花のリースを
たいせつな人のために買った
帰り道
どうしようもなく鼻歌があふれて
かろかろと
空色の
前庭にちかい場所で
まわり続ける


自由詩 はるか Copyright ことこ 2009-06-19 21:53:30
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