橋上
kaeru

草野球のグラウンドに照明が点る頃
まだ夕陽の漏れるまるい空に
すーっと二羽の鳥が舞いあがる
ただそれだけのことに見とれて
足を止めている 橋の上で

右手のバッグには夕飯の材料
左手のタオルで額の汗を拭いながら
腹を空かせた子どもの待つ家へ
大急ぎで帰るはずの夏の夕暮れ

自転車で行き過ぎる女学生
走り去る近くの高校の運動部員
散歩する老夫婦 婦人たち
欄干越しに釣り糸を垂れるひと

橋の上は意外なほど賑やかで
人と車 時間と光と風が行き交う
くるり見渡せば 水面には魚 空には鳥
せわしい夕暮れのほんのひととき
足を止めている 幸福な人のように


自由詩 橋上 Copyright kaeru 2009-06-19 01:37:47
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