橋上
kaeru
草野球のグラウンドに照明が点る頃
まだ夕陽の漏れるまるい空に
すーっと二羽の鳥が舞いあがる
ただそれだけのことに見とれて
足を止めている 橋の上で
右手のバッグには夕飯の材料
左手のタオルで額の汗を拭いながら
腹を空かせた子どもの待つ家へ
大急ぎで帰るはずの夏の夕暮れ
自転車で行き過ぎる女学生
走り去る近くの高校の運動部員
散歩する老夫婦 婦人たち
欄干越しに釣り糸を垂れるひと
橋の上は意外なほど賑やかで
人と車 時間と光と風が行き交う
くるり見渡せば 水面には魚 空には鳥
せわしい夕暮れのほんのひととき
足を止めている 幸福な人のように