さよなら、鳩
佐野権太

喧騒のなか
細い雨のメロディ
梢にしがみついて
姿を変えてみる

みんな
どこへ向かうのだろう
遠い、稜線をこえて
あしたも、あさっても
きゅうに
手をつなぎたくなって
あなたの不在を確かめる

もっと
冷たい水をください

足首には
汚れた書簡が
巻きついている

夜はおびえて
細い首を
背中にうずめて、眠る



さよなら、鳩


心臓から羽がこぼれる
ひらがなだけがつもるから
意味をなさない
けれども
本当に伝えたかったのは
言葉ではなかった

対岸で
おともなく
光りをちらすように
手をふる
あなたの
ひじの角度を覚えてる

ありがとう
手をふってくれて
ありがとう







自由詩 さよなら、鳩 Copyright 佐野権太 2009-06-17 18:40:42
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