白い世界
あ。

忘れかけている遠い記憶のあの子

白いワンピースがお気に入りだった
生まれつき色素が薄かったようで
肌は陶器のようにつるりと白く
髪は太陽に透けるような茶色だった

大人は口をそろえて
本当に白の良く似合う子だこと
まるで天使みたいねと言う

だけど、知ってるんだ

あの子はね
蛙を踏みつけるのが大好きで
蜘蛛を握りつぶすのが大好きで

ワンピースを汚さないように注意しながら
こぼれそうな美しい笑顔で
長い髪はキラキラとまぶしくて
足元でつぶれた蛙のはみ出た内臓さえも
彼女の力で美しくなっているような気がした

テレビで見た天使の羽も天国も
去年出席したいとこの結婚式のドレスも
あのワンピースくらいに真っ白だった

白が純粋とか清らかさとか
そういうものの象徴ならば、彼女は

一緒に見た百合の花は
いつまでも咲いていたら、と思ってた

幼なじみだったあの子は
今でも白いワンピースを着てるのだろうか
ちゃんと天国に行けるのだろうか
死後の世界はわからないけれど
もしも天国や地獄があるとしたら確実なのは

あの子が地獄に堕ちるなら
きっとわたしも一緒にいく


自由詩 白い世界 Copyright あ。 2009-06-16 23:42:40
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