不朽の私
百瀬朝子

わたしはちっとも朽ちない
咲いているあの赤い花のように
なぜわたしはいつまでたっても
朽ちていかないのだろう

食パンに生えたカビをまとっても
古くなるだけ
わたしは朽ちない

雨に濡れて放っておいたとしても
乾いていくだけ
わたしは朽ちない

 朽ちない
  朽ちない
――――朽ちていかない

わたしは古くなる
皺を刻んで
衰えて
それでもまだ朽ちていかない

心はこんなにも空っぽになった
虚無に満ちて
カラカラに渇いて
ボロボロに疲れて
それでもまだこの体は形を保っている

なぜ
わたしは朽ちていかないのだ

もう充分に咲いた
わたしは花になりたい
咲き誇ったらあとは
朽ちてゆくだけの
花になりたい

 その裏、
  の裏、
――――の裏、

たとえ燃え尽きたとしても
この体は朽ちていかない
わたしを生かしつづける
わたしはそれに甘えている
朽ちていかないのを知っているわたしは
期待してる
また輝けること
もう一度咲き誇ること
朽ちていかないのは光をつかむ可能性
信じて期待してる
不朽の私がいるかぎり
前へ進むことを躊躇ったりしても
あきらめたわけじゃないんだから

    、
    、
――――  、

くるしさから逃れたくて
手っ取り早く
ここで朽ちてしまいたい
願っても馳せても
不朽の私
あの赤い花のように
わたしは朽ちていかないのだ


自由詩 不朽の私 Copyright 百瀬朝子 2009-06-16 11:26:24
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