烏、恋歌(からす、こいうた)
邦秋

空見上げ 追いかけた
地に降りて 離れ見た

よく似てる 烏だね
黒の羽根、黒の陰

ただ、あまたで補えぬ
笑みで白くなれぬのなら

少しだけの祈り
剥されて、轢き千切られるよ
戸惑いと沈み逝く脚
失えぬ運命(さだめ)に
捨てた歯を拾うより憐れな
墜落の手を伸ばせば、「もう一つ」と続いて

何気なき乾く気(き)に
吐息かけ包めたら
瞳から裂け出した
芽を拡げ、蕾まで

何故、禁じられる時に
愛は近寄る、悪戯な

唯一の隙間を
埋めるような羽根の動かし方
近附いて、僅か離れて
在り余る烏の
ただ一つ、受けるは金縛り
墜落の、渦に飛び込み、なぜ苦しむの、傍で


自由詩 烏、恋歌(からす、こいうた) Copyright 邦秋 2009-06-16 10:20:21
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