キリンの歯
たもつ

 
 
「鼻が長かった」彼女は言った

「ゾウみたいだね」僕は言った

「ううん、キリンみたいだったわ」と彼女が言うので

「首も長かったんだ」と聞くと

「歯がキリンみたいだったの」
彼女はそう答えた
僕はどうしてもキリンの歯を思い出せなかった

自分の歯を舌でなぞってみた
昔からあったはずなのに
懐かしくも何ともない形と触感だった

それから僕は彼女の乳房を頬張った
口いっぱいに頬張った
かつて、その二つの膨らみを
本当に必要としている人がいたような気がした

雨音が聞こえた
通り雨かもしれなかった
その日は彼女の乳房と僕の歯だけがあれば
それでよかった
ただ僕らはひどく疲れていたかった
 
 


自由詩 キリンの歯 Copyright たもつ 2009-06-15 19:32:42
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