キリンの歯
たもつ
「鼻が長かった」彼女は言った
「ゾウみたいだね」僕は言った
「ううん、キリンみたいだったわ」と彼女が言うので
「首も長かったんだ」と聞くと
「歯がキリンみたいだったの」
彼女はそう答えた
僕はどうしてもキリンの歯を思い出せなかった
自分の歯を舌でなぞってみた
昔からあったはずなのに
懐かしくも何ともない形と触感だった
それから僕は彼女の乳房を頬張った
口いっぱいに頬張った
かつて、その二つの膨らみを
本当に必要としている人がいたような気がした
雨音が聞こえた
通り雨かもしれなかった
その日は彼女の乳房と僕の歯だけがあれば
それでよかった
ただ僕らはひどく疲れていたかった