影
夏嶋 真子
わたしの中の真昼の闇
闇の中の狼の虹彩
虹彩の中のおまえの影
ふるえている
耐え切れない心を
掻き毟るための
1/4拍子を宿した指先
どうかわたしの爪を切って
おまえの心音に近づけるように
深爪があつくて
じんじんと絞られ
風化をはじめる玻璃の森
青い鳥よ、足元で泣け
わたしは見向きもせずに
からからの咽を捨てて歩く
乾いた声がこだましている
(この罅割れたかかとが 心の所在なのですか )
わたしが欲しいものは
花の奥へとのぼりつめ
つまさきがはねた場所に広がる、
ヒマラヤの空
地上の理を解き放って
青を破る青、
成層圏へと落ちてゆく
わたしの中の高温
高温の中の悲鳴
悲鳴の中の静寂
その静寂の中のおまえが
やはり影であると知って
わたしは泣く
捨てたはずの咽を
しとしとと 鳴らして