あれあし
靜ト
ベランダの網戸に
小さな蜘蛛が一匹、しがみついている
風のごうごう吹く真夜中だから
足をちぎれそうにのばして
蜘蛛なんて見るのも嫌なのに
ひどいすきま風に顔をしかめながら
なぜか私は
ひとさし指をそっと差し伸べた
2,3回足でこわごわ触れてから
ゆっくりはい上がってきたそれは
目をつぶってしまったら
乗っているのかどうかも分からない程で
なんだか胸がくしゃりとなるのだった
リビングに戻ったら
電話のボタンが点滅していて ずきっとする
押したらきっと耐えられなくなると分かっているのに
「ツー 本当、ごめん。 でもこれからも友達でいて欲しい。
じゃあ…また明日。 ツー 6月3日午後…」
あーあ
クッションを放り投げた手をポケットにしまいかけて
はっと指先を見たら細こい足でまだしがみついていて
私は、苦笑する
おーんなじ おんなじだ
二つのカタマリがぬくもりを恋しがっているだけ
痛みなんてかえりみる間もなく
今夜はきっと荒れるから
安心なあたたかな眠りにつこうか
疲れた足をそっと折りたたんで
明日晴れたらまた、それぞれの足で