、何度でも
百瀬朝子
沈んでいた言葉がいま、動き出す
オート構築されてゆく
この手でつくりあげた方程式も
組み替えられていく無情
あたしは頭を抱えているだけ
記憶はつくられた意識の中
あたしらの足跡は風にさらわれていった
もう思い出すこともないだろう
それでも消えない胸の痛みに
どこかホッとしているマゾヒスト
飼い慣らした感情に
芽生えた反抗心を摘みとって
君に投げた
嫌いなあの子より
一段上の幸せがほしい
あの子が望んで手に入らなかったもの
今はあたしの手の中に
、なのに
あまり幸せな感じじゃないの
どこかで何かを間違えたニヒリスト
掛け違えたシャツのボタン
気がつくことなければ
それでも幸せだっただろう
、なのに
、ああ
気がついてしまったの
あの子の幸せはあたしの幸せにはならない
目をつむって
眠りにつく瞬間みたいに
そっと
閉じた心
そっと
君にだけ
見せてあげる
あたしの汚れたところまで
!
あ、でも
きれいなその手で触ってはダメよ
あたしがゆれるから
ゆれてしまっては
君に心
、傾いてしまうから
夜が明ける
、何度でも
白んだ窓に
未来を感じる
、何度でも
浅い呼吸をくりかえす
地球の自転にあわせて
ゆっくりと
、しかし確実に
頭を抱えたあたしは
夜に沈めて朝を迎える
そう、何度でも