六月の、
ことこ

後ろ髪を引かれる
どうして
妹のように美しい髪でなかったのだろう
暮れていく陽の
もう少しだけ、を残した
闇が束ねる
手つきはやさしくて
頭をかしげる速度で
すべて委ねてしまいたくなる


ぽかりと浮かぶ満月は
ひるまのうちに含んだひかりを吐き出し
閉じられた夜の反射率を支える
行きかう人びとの顔は見えない
この町でさえも
はねかえる声はこだまして
まばゆい波紋を描き
その縁を
犬の遠吠えが沿ってゆく
秒針のような正しさなど、必要とされない
湿った鼻が
残り香を丁寧にかぎ分ける


ひたひたに注いだソーダ水の
水面へ昇るいきおいで
生まれては消えていく、
を繰り返す

        (まるで
         ながれぼしのようだね)

こどもたちは嬉しそうにほほえむ

        (ふたりだけのひみつだね)

、と
寄せ集めた紫陽花は庭で
今年もまた雨を手繰る


いつまでも
あたり前の顔をして待つ
ひと知れず
     ((わたしに知れず
根粒菌と手をつなぐ
約束、だけを守っていた
生まれたからには
自由でなければ
、と
/自由でなければ
/生まれてはならない
/、と
(束縛されて)
裸足で土を踏みしめれば
どこまでも透明な闇が広がる


自由詩 六月の、 Copyright ことこ 2009-06-13 12:54:21
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