蛇蝎(だかつ)
月乃助


生まれ落ちた
性(さが)なれば
求めるその時は、
すべて
毒まで飲み干さずにはいられない

入口を探し当てた
斑(まだら)の蛇は、
男の耳にからそっと這い入り
女陰に巣くう蠍は、それを心待つ

部屋の隅の壁に温もりのない甲羅と鱗が
擦れる
垂涎は毒に塗れ
絡まる

縮れた髪の陰を揺らす愉悦の臥所
窓の四角に剥ぎ取られたネオンが照らす街の駘蕩

丸い瞳が飢えた光を弾き
壁を這い上がる
シーツを握る手は忖度(そんたく)
抗う声が漏れ出る
悦の交尾の細波(さざなみ)

愉しみの泰斗
男の二股の舌が探る、
蠍の敏感な危うい突起
どこまでも
果てのない
愉楽を求め退嬰を知らぬ先に
流れていく



自由詩 蛇蝎(だかつ) Copyright 月乃助 2009-06-13 02:02:45
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