雨の降る日にグラインドコアを
竜門勇気
街を歩く時は
とても嫌な気分です
人と僕は
とても近しくて
僕は僕と
とても遠くなるから
僕と街は
とても違うから
機微を閉じては
鎖と指輪
誰かと誰かは誓い合ってる
窮屈な関係は
雨が降っても
駆け出すだけで
傘を探さない
あちらこちらに
行列は伸びてく
こいつに並ぶとき
僕は薄っぺらになる
目の前の ナップをサックしてる彼
背中から死人の臭いがする
どうしてここまで来れたんだろう
腐り続ければ
こんな風にもなれるのか
さっきまで自分は死なないと思っていた
さっきまで誰とも違うと思っていた
僕の
背中を見る 黒いドレスのヒト
背中から醒めた諦めを感じる
誰にもなれないんだろう?
僕もそうだ
どんな夢も見られない
さっきまで君もそうだった
これからもきっと変わらない
綺麗な目をしてるね
誰にでもそう言ってみる
自分で自分を思うことほど
綺麗な物は他に無い
自己嫌悪も絶望も
自分に向いてるなら
まだ救いようがあるって
でも こんな苦しいことはねえよな
僕の手首を見てごらん
傷一つ無いだろ
でも君のより
正しいって思えるかい?
誰かが誰かより正しいという人や
誰かが誰かより間違ってないと信じる人
あっちこっちで愉快な小競り合いをしてる
そんな風に僕には見えるよ
作り物の第三者が
都合のいい公平さを辞書に加えていく
街はすべて
少なくとも世界のすべての一つだ
ヘッドフォンで聞くグラインドコア
「ハードコアミュージックの中で もっとも速さと破壊衝動への欲求を顕にする音楽 それがグラインドコアっていうんだ」
一昨日からやっと
梅雨らしくなった雨雲から
ブラスト・ビートが降る
蛙が鳴いています
今日が最後の日のように
雨だれが轟音となって
夜をつんざいていきます
行列に暴動の臭いがする
雨の降る日に
グラインドコアを