月明かりの下の顔の見えない釣り
北村 守通

鈴が鳴る
鈴が鳴る

あの世と
この世が
繋がって
竿先
細かく
引き絞られる

鈴が鳴る
鈴が鳴る

掛かってしもうた
あの世のモノが
激しく
激しく
身をくねらせて
激しく
激しく
混乱している
口元
思わず歪んでる

鈴が鳴る
鈴が鳴る

あの世を
この世に
引き寄せる
掛かってしもうた
あの世のモノは
じわり
じわりと
近づいている
怯えきって
固まる
怯えきって
重くなる
震える
震える
糸が震える
糸が鳴く
鈴が鳴く
竿が満月
今宵は満月
紅に染まった
暗い満月

あの世と
この世の
狭間には
紅に染まった
暗い満月
歪んで
落ち着かない
暗い満月
その中に
その不安定な
楕円の中のどこかで
あの世のモノが
身をくねらせて
目を
白黒させている
喉をつまらせ
七転八倒
灼熱に掴まれる
意識が遠のく
痙攣する

あの世には
もう帰れない

鈴が鳴る
鈴が鳴く
波に揺られて
鈴が泣く


自由詩 月明かりの下の顔の見えない釣り Copyright 北村 守通 2009-06-12 01:16:36
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