ペーパーナイフ
ふるる
さざんかの咲いている道を下っていました
私は光るペーパーナイフをたずさえて
ナイフはとてもよく切れるのです
手紙の封
白い手紙の封をサクリと
その手紙には何が書いてあったのか
今忘れるために少し
息を止めました
さざんかは白く
炎のように風に
ゆらめいて日々を
蘇らせる
あなたと、歩いた
わたしのにほんの足は
あなたのもとへと急ぎ
交互に動いているけれどまるで
落として狂ってしまった
時計の針のように同じ場所を
ぴくりぴくりぴくり、と
私は光るペーパーナイフをたずさえて
いましたが
時計の針かもしれません
もう
時間の進むのを見たくはない
いいえこれは
本物のよく切れるナイフかもしれません
とてもよく
切れる
切れた
あなたの消息それから
わたしとの
さざんかの燃える道
歩き
歩いた
その時の
約束
約束も
手紙には
何も書かれてはいなかったいいえ
やはり書いてあったのです
破り捨てた手紙
もういらないペーパーナイフ
さざんか
にほんの足は
白い花を手紙をふみしだき
汚し
もうあなたのもとへと
急ぐ必要も
なく
ペーパーナイフを墓標のように
突き立てた