クリュッグVSドンペリニョン ☆
atsuchan69

萌え、

奴らには判らない
のだ。

ホストを囲んでドンペリが最高だと信じている
煌くシャンパンタワーを前にした
派手やかに着飾った色カノ、
そして何を隠そう・・・・この俺だって
かつてはドンペリが最高だと信じていたが

小雨が止んだ交差点で
いつになくヒステリー気味な、
エストロゲン注射によって女となった
専属運転手のドレミちゃんが
スタンドカラーの制服に白手袋、
白いパンプスでブレーキを蹴るように踏むと
ABS装置付油圧式サーボが働き、
水玉を弾いたシルヴァーセラフは穏やかに停止した

湿ったアスファルトの上を子らが過ぎて
押し黙ったドレミちゃんに気兼ねすることもなく
ふたりベーゼをつづけて・・・・左手は胸に
右の手指はスカートの奥にあった

だが、この女も
ドンペリが最高だと信じている
それは瞳を見ればわかる
――萌え、
と。

言葉にしなくても女は既に語っていた
状況証拠ならいくらでも挙げることができるのだ
女の腕にある真新しいカルティエの時計も然り、
語ろうとしない昨日や連絡の途絶えた日々・・・・
電源を切っていたという時間も然り。
つまりパパである俺と俺以外のオトコと、
萌え、であるオマエは
たぶん三連リングみたいな関係にあるのだ

 ドレミちゃん、青は進め。
 覗かれるじゃないか
 はやく行けよ
 なんだって? 青じゃない、緑だって?
 ナルホド。〜確かに緑だ )))

激しく、激しく、
俺のクリュッグは揺さぶられて
ああ・・・・
キャップシールも外れて

嫉妬ほど人を夢中にさせるものはない
だから、ドレミちゃん
俺はおまえを嫉妬させようと今こうしているのだ
わかるかい? ドレミちゃん

もう、誰に覗かれても構わないんだ
おまえの灰色の瞳の中で、
ゴールドに耀くクロ・デュ・メニルは泡立ち
今にもコルク栓が飛び出しそうだ











自由詩 クリュッグVSドンペリニョン ☆ Copyright atsuchan69 2009-06-10 12:28:25
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