あなたに
ゆびのおと

今はもうだいぶ古びてしまったけど、
あなたが生まれてすぐの頃
お風呂に入れている写真がある。
頭の後ろを片手で支えて
おなかの上にはガーゼのハンカチ

ただ無心に 洗い残しのないようにと気を付けていただけなのだけれど
写真を見たある方に褒めていただいたのが 妙に心に残っていた。

手つきがこまやかであること(私は雑でぞんざいな母だったけど)

月日が流れ
今 あなたは世界への愛にみちて眩しいくらい

そういうものをみると
不安や焦躁
倦怠や焦りの
日々繰り返される日常のなかで
こまやかな手つきを
繰り返し
繰り返し
雨のように
降り注ぐように
忘れなかったことが

ささやかに誇れる



自由詩 あなたに Copyright ゆびのおと 2009-06-10 04:07:33
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