あなたに
ゆびのおと
今はもうだいぶ古びてしまったけど、
あなたが生まれてすぐの頃
お風呂に入れている写真がある。
頭の後ろを片手で支えて
おなかの上にはガーゼのハンカチ
ただ無心に 洗い残しのないようにと気を付けていただけなのだけれど
写真を見たある方に褒めていただいたのが 妙に心に残っていた。
手つきがこまやかであること(私は雑でぞんざいな母だったけど)
月日が流れ
今 あなたは世界への愛にみちて眩しいくらい
そういうものをみると
不安や焦躁
倦怠や焦りの
日々繰り返される日常のなかで
こまやかな手つきを
繰り返し
繰り返し
雨のように
降り注ぐように
忘れなかったことが
ささやかに誇れる