家電
山中 烏流
*ごうんごうん
彼は
何も口にすることはないままに
色々を咀嚼して
そのほとんどを
無かったことにしてしまう
勿論、その中には
わたしの使用済みだとか
出し忘れたティッシュだとか
様々
言えないようなものもある
消化の途中で
中身を見てしまおうとすると
恥ずかしいのか
消化をやめてしまうから
それが少し厄介で
面倒だったりする
*ちーん
自分に合わないものを
逐一こなごなにするのだけは
やめていただきたい
それから
一度凍結させたものを温め直したり
何でもなかったことを膨らませるのも
出来れば
やめていただきたい
*(色々な音)
彼女の発する言葉を
全て鵜呑みにしたとするならば
それはそれで正しくて
しあわせなのかもしれない
わたしは
その半分くらいを信じているけれど
友人等によれば
それでも多いらしく
少し、笑われてしまった
それでも、
彼女に罪は無く
*ぶーん
健やかに育つかもしれない
そのままを維持するかもしれない
腐り落ちることもある
けれど、そこでは
何も生まれない
*きゅいーん
相手に合わせるのが得意なようで
彼と、彼の周りは
いつもきらきらとしている
彼が色々を溜め込むさまを
わたしは間近で見ていた
と、同時に
わたしはそれを手伝った
けれど
それが彼の役目であることを
わたしは知っている
だからこそ、
それを止めることはなく
尊ぶこともない
*ぷるるる
必要なときほど繋がらない
わたしがそう言うと
きみは
いつも決まって
そんなものだよ、と言った
言って、そのあとを切り取るのが好きだった
今日もわたしは呼び出されない
きっと、それは明日も変わりない
下手すると
来年まで待っても
呼び出されないかもしれない
けれど
それを確かめる術すら
そこには、存在していない