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あすくれかおす



両手でふたつ
チョキを作って
横に寝かせて
ハンカチをおさえてみる
真ん中がふくらんできて
光る球体がしみ出してきたなら
これは夢
真ん中がしずまったまんまで
外ではせわしく青やら赤やら
瞬間の黄色にぼんやりしてる人を捜したり
ぶらぶら視線を泳がせはじめる
これが今
19時42分の光景



起きているときにあつめた光景が
寝ているときに光体になるのだ
人びとは
だまっていて 勤勉にも見えたりするが
もくもくと光景をあつめているのだ
1と9と4と2と
バラバラにしてベランダに撒いても
時間は育ちはしないよね
問いかけない
これが今
19時43分の光景



そういえばやけに明るい
夢ではなくて今ですが
いつもよりもたくさんの羽虫が
夜の辺に集まってきている
目をキラキラさせながら
そうだ
ここは
この文字辺は
今でも夢でもないですが
今日はソドムの日
そう名付けてみる
そんでゴモラは海亀でー、



そんなふうに飛び立ちはじめたり
ベランダに撒いた文字を気にしたりして
夢でありここが
今であることに気づく
いま?
20時ちょうどのちょっと前
そんなふうに感覚は
いつも曖昧にシフトして
そんなおかげでここにいる
ふたつのチョキをそっと起こすと
ハンカチが這うように飛んだ








「どうやらそこなわれているようです。
そこで失われているようなんです。
宙づりになっている、あるべき望みが爛々としているはずなのに。
枕元からじゃ届かないスイッチまでの距離のように、
あらゆる覗き見が、ふいに失明してしまうように
そこで何かが失われているようなんです。
どんなに手を広げて、どんなに指先をしめして、
この身体から遠くに行こうとしても
外側ではだめなんです。どうしても暗がりがないのです。
外側にあるとすれば、あるとすればそれは、
同様に広がろうと、遠くに行こうとまさぐっている、
とりわけあなたの覗き見でしょうか。
わたし、
そこなわれているようなんです。明るみを失って。
だけど触れば、触れれば分かります。取り戻ってくるのです。
あなたのような、
わたし。
とりもどすのもうしなうのも、結局は揺りかごですから。
そうして
わたしのような、
あなた、
こんなこと言っても、ちっとも怒らないんですね」









海の方角を見つめる
この町に潮騒が届くには、あと892秒ほど
ゴモラはそろそろ海に帰ったかなあ
そして光を見つけたろうか
まばゆく羽虫が踊る夜の辺で







自由詩 clothing Copyright あすくれかおす 2009-06-03 23:30:50
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