ガーベラが咲いていた、君の白い腕に。
色香を凌ぐ緋色の神秘は、
"祖母が好きだったの"
という一言で、とても優しい香りがした。
名前をもたない、雨の季節だった。
透き通ってしまいそうな硝子の君は、陽に抱かれることができなかった。
神秘の花弁は夜露で濡れた。そうすることでいっそう、緋色は神々しく潤った。
"祖母が好きだったの"
と言った君の弱さに、気づいた時には手遅れだった。
緋色を一輪残して、硝子の君は消えてしまった。
君の祖母が好きだったのだというその花を、私は時折、夢に見る。
ガーベラが咲いていた、君の白い腕も。