綺羅花
あ。

まだ色を持たない紫陽花は
ふつふつと泡みたいな蕾をつけて
くすんだ背景に溶け込む

重たく湿った空気の匂いがし
右足の古傷がしくしくと痛む
身体は正確に天気を教えてくれる

もうすぐ、雨が降るよ

透けた絹糸のようなみずは
さらさら辺りを浄化していく
長く降ることはないだろう
指差した向こうの空は明るい

幕を引いたら景色が変わる
手品で最後に驚く場面みたいに
落ちていたしずくが止まるとき
きっと全てが色彩を放つ

たっぷり溶かした絵の具にも似た
瑞々しい色の紫陽花が花開く
見えないこころに沿って流れる
甘くて淡い、光る蜜



自由詩 綺羅花 Copyright あ。 2009-06-01 21:58:09
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