極小詩集 〜 青い果実 〜
こしごえ

「 ほころびる時 」


宇宙の襞目にある 水のこころ

器をえらばず しん透し いのちを潤す
真空において純粋回帰する単音
貴殿の耳にこだまする
(覚めることのない果実を。
遠いまなざしの
青く
広がる

空に雲ひとつなく冬日和 ああ!
(((生きなければ、死ねない)))
死はここにある
生きている内に。私という河流は海原へ
流れゆきふたたびどこか
雲となり山林にしみ透り
水平線を限る。魚影の光芒
冬枯れて月冴ゆ
雪原も青白く
ふらりはぐれ雲は高く
天狼星におわれ
うしなわれた風を
高く高く、

闇黒の宇宙に浮かび上がる。
貴殿の耳は、
冴え冴え見つめる瞬きを
土曜の正午が耕す(水の惑星よ

死の同心円で
すべからく公転すべき生だ。と土にかえる魚影
いくたびもめぐる雲路に私の軌跡
ほほえみあいつつ、春の雪の果て、野焼きなどする










「 春分 」


待ち尽す霊園
しずまりかえり霞も青く

生者の水源の深淵に。
群星する密林を走る水脈

あの一瞬、
船頭の乗せた虹が咆哮を上げる

うしなわれた青い果実
ふたたび実ることのない
ひとみに映る
(んーふふ
 んーふふ
 んーふふふ ん
メメント・モリ
桜花の白く微笑む
蒼空へ立つ雲





※ 「メメント・モリ」=「死を想え。死を忘れるな。死を覚悟せよ」










「 未亡人 」


明日も亡き未来のおもひ出
冬の雨に濡れる。フルーツ












※ 以上は、太陽書房 (2009年 春)iPプロジェクト
  アンソロジー詩集「FRAGILE ONE」収録作品三篇。

※ 「 極小詩集 〜 青い果実 〜」 というタイトルは、
  ネット上公開のために私がつけたものです。




自由詩 極小詩集 〜 青い果実 〜 Copyright こしごえ 2009-06-01 07:43:11
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