果てしない物語
瑠王
君らが私の年輪を見遣る時には、すでに私は切り倒された後だろう。
残された私の上で、手を合わせるのは誰だろう。
そこから見える東雲は、成功と報酬に溢れているだろうか。
それとも人間らしい哀愁に満ちているだろうか。
幼い頃に浜の砂に描いた絵は、まだそのまま残っているだろうか。
もう何を描いたかさえ思い出せないが、私は残っていて欲しいと願う。
沼に飲み込まれようとする私の骨は抗うだろう。
かつて好きだったアトレイユのように。
未練がましいけれど、見くびらないでほしい。
残された私の一部で家を建ててみるといい。
すると私の屋根の上から、私の観ていた世界が見えてくるだろう。
コバルトブルーの緞帳は幾重にも明けを操り、葛藤を乗せた馬達が大地で踊る。
あの人のカシミヤが艶やかに誘うだろう。
葡萄の房のような鼓動が愛を司る。
土と蜜の香りが毎晩のようにやって来る。
雲は朱色を仄めかして向かう先へと旅だってゆく。
私の麻のストールは褪せてしまった。
しかし年輪は私のうたを象り、私の根は時の秒針と共に永遠に眠るだろう。