雨香
ことこ

後ろ髪を引かれる
どうして
妹のように美しい髪でなかったのだろう
暮れていく陽の
もう少しだけ、
を残した
闇が束ねる
手つきはやさしくて
頭をかしげる速度で
すべて委ねてしまいたくなる

ぽかりと浮かぶ満月は
ひるまのうちに含んだひかりを吐き出し
みずみずしく夜の反射率を支える
この町でさえも
はねかえる声はこだまして
まばゆい波紋を描き
そのすき間を
犬の遠吠えが縫っていく

ひたひたに注いだソーダ水の
水面へ昇るいきおいで
生まれては消えていく
を繰り返す
紫陽花は庭で
今年もまた雨を手繰る
ひと知れず
栄よう分を蓄えながら
ひいやりと
裸足の土の感触が咲き
どこまでも透明な闇を迎える


自由詩 雨香 Copyright ことこ 2009-05-31 15:32:33
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