雨香
ことこ
後ろ髪を引かれる
どうして
妹のように美しい髪でなかったのだろう
暮れていく陽の
もう少しだけ、
を残した
闇が束ねる
手つきはやさしくて
頭をかしげる速度で
すべて委ねてしまいたくなる
ぽかりと浮かぶ満月は
ひるまのうちに含んだひかりを吐き出し
みずみずしく夜の反射率を支える
この町でさえも
はねかえる声はこだまして
まばゆい波紋を描き
そのすき間を
犬の遠吠えが縫っていく
ひたひたに注いだソーダ水の
水面へ昇るいきおいで
生まれては消えていく
を繰り返す
紫陽花は庭で
今年もまた雨を手繰る
ひと知れず
栄よう分を蓄えながら
ひいやりと
裸足の土の感触が咲き
どこまでも透明な闇を迎える