重いまつげに夜
ask
歌舞伎町の入口の
閉店間際のドトールは
ざわりざわりと熱を帯び
ふわりと結った後ろ髪
たどたどしくも日本語を。
隙間に空いたふたつの穴に
無理矢理おとで封をして
行ったこともない寒い島の
温度でグラスの氷が溶ける
電波なんかを伝った言葉も
たまには硬い響きをするので
気まぐれな親指一本に
あっけないほどひっくり返る
目に鮮やかな花びらの裾
守られるべき手をしっている
疲れた高いヒールの足首
甘えるべき手をしっている
待つのは遠い、来ないひと
あるのかないのかわからない、
たとえば寒い島に住むひと
ふわりと揺れる日本語が
今日の終わりを告げるので
放り出された新宿の
無限にひろがる湿った出口
待つのは遠い、来ないひと
あるのかないのかわからない、
わたしの中の霧に住むひと