重いまつげに夜
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歌舞伎町の入口の
閉店間際のドトールは
ざわりざわりと熱を帯び
ふわりと結った後ろ髪
たどたどしくも日本語を。



隙間に空いたふたつの穴に
無理矢理おとで封をして
行ったこともない寒い島の
温度でグラスの氷が溶ける



電波なんかを伝った言葉も
たまには硬い響きをするので
気まぐれな親指一本に
あっけないほどひっくり返る



目に鮮やかな花びらの裾
守られるべき手をしっている
疲れた高いヒールの足首
甘えるべき手をしっている







   待つのは遠い、来ないひと
   あるのかないのかわからない、
   たとえば寒い島に住むひと









ふわりと揺れる日本語が
今日の終わりを告げるので
放り出された新宿の
無限にひろがる湿った出口















   待つのは遠い、来ないひと
   あるのかないのかわからない、
   わたしの中の霧に住むひと









自由詩 重いまつげに夜 Copyright ask 2009-05-31 07:23:59
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