情熱
遊佐



貴方が遠い昔に画布に閉じ込めた想いが、遥か時を航り
海を隔てた僕の岸辺に辿り着く

貴方が空と大地と巡る風の中に垣間見た世界が、
碧眼ではない僕のレンズを通して
色鮮やかに脳裏に広がって行く

風は何と貴方に囁きましたか?
太陽は何を貴方に説いたのでしょう
黄色い花の群れの真ん中に
貴方は何を見つけたのでしょう

僕は、この絵の向こう側に
その答えを見い出せるのでしょうか

永きを経て運ばれた貴方のジパングは
今も色褪せることなく
僕を
風と太陽と黄色い花の真ん中へと誘い

僕は
音も光も色も無いその空間に漂いながら
手探りで泳ぎ
貴方の世界へと旅立ち
幻想に抱かれながらひまわり畑を巡って行くのです

飛ぶように
跳ねるよに
はしゃぐ魂の残照を感じながら
遥か遠いアルルを懐くのです

風と太陽と、少し歪んだ感性の間に
暁を見つけたならば
きっと
至福の時を得るのでしょう

私は貴方の影を踏めるでしょうか?
私は貴方の光を抱けるのでしょうか?

大海原の真っ只中で、命を支える帆を切り裂いて迄も描くに値するものに出逢えるのでしょうか?

南仏の柔らかな恵み浮かぶ貴方の一枚に
神様の啓示を得たならば
遠い昔に貴方が見つけた風と太陽と黄色い花の真ん中へと辿り着けるのでしょうか?

僕は行けるでしょうか?
貴方が愛したジパングへ…と。




自由詩 情熱 Copyright 遊佐 2009-05-29 20:29:28
notebook Home