午穂
木立 悟






髪を切る音
霧に落ちる道
羽と火の音
氷の船


高く奇妙な階段の家
ある日消えたあとの空地を
ひとつふたつすぎてゆく声
影のなかをすぎる影


海に沈みかけた灯から
海をなぞる路へ
色も光も音もひとつに
低い曇を照らしている


海の底と見つめあう
聴く目 見る耳を片方ずつ残し
あとは花を植える
海の底と見つめあう


つまさき立ちの
ななめのからだ
器は鳴る
器は鳴る


こぼれ こぼれ
こぼれつづける
眠りの奥の眠りに戸惑う
覚めても覚めても 戸惑いつづける


空の道とおれ
空の道とおれ
曇のうしろまわれ
空の道とおれ


うたがうたにくるまれて
抱かれ うたに揺れている
まぼろし さざめき
かつてそこにあったいとなみ


誰もいない場所の視線
うしろ影を切り 挨拶は去る
静かに
花と光を鳴らす


むらさきの風
むらさきの音
離陸を誤る鴉の群れ
土へ土へ消えてゆく





















自由詩 午穂 Copyright 木立 悟 2009-05-29 17:36:53
notebook Home 戻る