先輩フェチ
佐野権太

演劇部の先輩のふくらはぎに
さくり、と突きたつ
矢文になりたい

長閑な朝の通学路に
あらっ?と気づかれて
さらさらほどかれたい

演目は
「草原とピアノと少女と」
そんなガラス球

僕は
ダンボールで作った草とかを
かたづける役でいいです

*

退屈な午後の授業は
エスケープして
自由な水色に走り出す

先輩にみつかって
きみねぇ、とあきれる
小さな溜め息に叱られたい

飲みかけのサイダー瓶から
しゅわりと広がる香り
そんな微炭酸

僕は
先輩の胸の
ポケットの中とかが
いいです

*

先輩の瞳にひろがる
琥珀の海の、さざ波

舞台袖の床の油脂と
体操マットのひんやりした汗の匂いに
天地を曖昧にされながら
しっ、誰かくるわ!
とか言われたい

*

先輩、
僕はHENTAIでしょうか

それとも
美しいものに恋する心を
フェティシズムと呼ぶのでしょうか







自由詩 先輩フェチ Copyright 佐野権太 2009-05-29 15:14:56
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