麦畑
蒼木りん

黄金に実った麦畑は
刈られるのをまっていて
私は
ずっとこのまま
黄金でいてほしいと思っていた

時は止まらない
緩やかにすることはできても
そう信じたい
その術を想い描いても
急ぐ車は
私を連れ去っていく

風が渦を巻いて吹き抜け
嵐がやってきた
麦畑は暗い海になってうねっている
その上に船をこぎだした私は
転覆する

気づくと
黄金の水の中に沈んでいて
たくさんの小さな気泡がのぼっていく
おなかいっぱいに
その液体を飲み込んで
私は大きなゲップをした

眠るときと酔うときと
似ている感覚が溶けて
そのまま意識を浮かばせていたい
目を閉じると
黄金の風が吹いている



自由詩 麦畑 Copyright 蒼木りん 2009-05-29 08:53:50
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