麦畑
蒼木りん
黄金に実った麦畑は
刈られるのをまっていて
私は
ずっとこのまま
黄金でいてほしいと思っていた
時は止まらない
緩やかにすることはできても
そう信じたい
その術を想い描いても
急ぐ車は
私を連れ去っていく
風が渦を巻いて吹き抜け
嵐がやってきた
麦畑は暗い海になってうねっている
その上に船をこぎだした私は
転覆する
気づくと
黄金の水の中に沈んでいて
たくさんの小さな気泡がのぼっていく
おなかいっぱいに
その液体を飲み込んで
私は大きなゲップをした
眠るときと酔うときと
似ている感覚が溶けて
そのまま意識を浮かばせていたい
目を閉じると
黄金の風が吹いている