桃源郷
あおば


                 090528


明白なことがあって
影が消える

隠れ里に住みたいと願う者が
桃源郷を営んで居るのだと
ほろ酔いの男が
駄洒落た顔を歪め
駅の階段で足を踏み外す
エスカレーターに乗れば良かったのに
エレベーターもありますぜ
あとからあとから沸き上がる叱責の声
階段を上りたかったから階段を上ったのだろうと思いながらも
見ない振りをしていたら
知人に出合う
彼は堂々として
これから山に向かうのだと
鍛えた脚を見せびらかすように
すたすたと階段を下りていった
上るより下る方が難しいのだと
だれかに告げるような
健脚であった
桃源郷に住む者は逞しいと
改めて実感する



自由詩 桃源郷 Copyright あおば 2009-05-28 13:45:13
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