もう、いいだろうか。
プル式
小さな渦のなかで停滞している
それは停滞と言う名の逆行
不動のそれはむしろ
流れに飲まれるよりも疲れる
足を離して浮かんでしまえば良いのに
それは二度と取り返しがつかない様で
まるで小さな蟻の命を奪う様に
無関心なそれが恐ろしく
無理やりにしがみつく
誰かが言う
悪くないよ
誰かが言う
気の性だよ
私は言う
そうだろうか
私は言う
本当に?
私はそれから
なんと言うのだろうか
夏に変わる手前の
少し蒸し暑い風の中で
私は空を見上げ
暑さを吐き出す
まだ蝉の鳴かない季節に
小さな羽虫が舞っている
うす曇の向こうで
雷の音だけがゴロリと鳴った
空には雨の気配はなかったが
一度大仰に空を見上げると
私は自転車を漕ぎ出し
車の来ない赤信号を渡った
それから
雨が頬を打った気がした。