チューインガム
山中 烏流
音楽は止まない
それは
人々の指先から溢れるものであることを
私/あるいは、あなたが
知っているからだ
そうして
その熱に触れる度
私/あなたは
それが
ありふれていて、なお
尊いものであることを
もう一度
思い知るのだ
ひだまりに咲く色は
何も
柔らかいものばかりではない
しかし、その
事実を知っている人々は
きっと
私が思うより少なくて
その方が、ずっと幸せで
あなたの舌先に絡み付いて
離れないままだった何かなら
今朝、寝言と一緒に吐き出されて
今は
私の耳の中に張り付いている
音楽は止まない
溢れる波によって
私/あなたは
動かされているだけだ
きっと
多分、そうだ
関係ない話をしよう
本当は小さい頃から
可愛いものが好きだった
それでいて、寂しがり屋で
頭をなでられるのが
何よりも好きで
ぬいぐるみに囲まれるのが
ささやかな夢だった
ただ、それがいつのまにか
ねじまがってしまって
額に触れる
あなたはきっと
最初と言われるより、前から
私の
一番しつこくて
甘ったるいであろう部分を
知っていたんだろう
音楽は止まない
ときおり早くなるそれに
じ、っと耳を澄まして
私/あなたは
その
名前、を呼ぶ
ひだまりに咲く色は
何も
柔らかいものばかりではない
しかし、それすらも
あなたは常だとして
その事実に触れることを
幸せだ、と言う
まるで
口付けるように、