対峙
佐藤真夏

海岸からは海岸が見えなくて
これでは砂漠と同じです、あなた
水があるだけよ
ただ水があるだけの砂漠よ

遥か 第五感界の外の霧を掴むには
衰弱するのがよいと聞きました
あちらこちらに船を描いて遊んだ頃
大気の中には大空が見えていました
目を閉じて地下に居た頃

ガラス瓶 過去の悲鳴が綴られていたとして、
渡来物 経由を繰り返して色まみれ
真っ直ぐでなければ混ざってしまう
純粋無添加の真心は 歳月を経て肌の色に近づいた
荒波に揉まれて着床した錆は、黴も、地下水を濁した

蓋に重ねた指先 少しのぼって
その首に浮かぶ ぷかぷか 脈拍からは
少しさかのぼって
明日が潤んで止まらなくなった
細く長い呼吸も湿り気を帯び始めて
船をたたむ
海岸もたたむ



自由詩 対峙 Copyright 佐藤真夏 2009-05-23 22:30:34
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