はやりやまい
あ。

すうっと堕ちていくような感覚と
鈍いしびれがあるという
それでいて苦痛ではないらしい

幼なじみのあの子も
隣の席の委員長も
さらにはわたしのママまで
患ったことがあるらしい

大人になるまでのあいだに
誰でも一度はかかるやまいよ

ママはそう言ってくつくつ笑う
笑い事じゃないでしょう
びょうきなんかなりたくないよ

幼稚園の年長組だった頃
はしかで高熱が出て苦しかった
友だちに会ったらダメって
うつっちゃうからって
身体は痛いし寂しかった

あんな風になっちゃうのかな
痛いのも寂しいのも嫌いだよ

そんなはやりやまいにかかったのは
まだ中学校の制服が汚れる前

それは確かにはしかにも似ていた
途方もなく寂しくてとりとめなくて
ただ、違ったのは
痛むのが胸の中だったこと

決して苦しいだけじゃない痛みの中
隅っこのしびれをじんじんと感じながら
わたしは確かに、堕ちていた

きみに触れたいと
思っていた


自由詩 はやりやまい Copyright あ。 2009-05-22 23:28:24
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