『菩提樹の生けとし岬』
Leaf
召した、と君は言う
稀薄な意思を養生するかのように優雅を演じた
祓った筈の手に付着したものは黒南風
去り難い指の先に現れた解錠の儀礼
尽力で抱えた儘ならぬ数の哨戒
遥か紅い夕凪に轟くは泣き崩れた一瞬の汽笛
千代に遠退いて細い閃光を放つ灯台の丘にて
嗚呼、来世ではソーダ水の淡い気泡に夕焼けが透過して
真赭に薄らいでゆくほどに深まるだろう
もう、いいだろう
脆弱な言葉のシカバネが増すこともない
肥沃な寡黙さの伝う人となりの土壌は
映える姿以上の慟哭に堪え忍ばんとす影にこそ映る
あの丘の大樹に触手を伸ばすなら
ノゾミに影を照らさずしても痛手を恐れない
それが白南風になり変ろうとて
生きざまを晒す
枯れて朽ちるほどに
堪え忍ぶ本望を知り
偏にその脈を分かち得ん
それをも叶わぬ泡沫なら
然して
何も生まず
何も死せず
何を望み
何を望まざるか
いかにも屍となる
BGM:Ajico/波動