『菩提樹の生けとし岬』
Leaf


召した、と君は言う

稀薄な意思を養生するかのように優雅を演じた

祓った筈の手に付着したものは黒南風

去り難い指の先に現れた解錠の儀礼

尽力で抱えた儘ならぬ数の哨戒

遥か紅い夕凪に轟くは泣き崩れた一瞬の汽笛

千代に遠退いて細い閃光を放つ灯台の丘にて

嗚呼、来世ではソーダ水の淡い気泡に夕焼けが透過して

真赭に薄らいでゆくほどに深まるだろう

もう、いいだろう

脆弱な言葉のシカバネが増すこともない

肥沃な寡黙さの伝う人となりの土壌は

映える姿以上の慟哭に堪え忍ばんとす影にこそ映る

あの丘の大樹に触手を伸ばすなら

ノゾミに影を照らさずしても痛手を恐れない

それが白南風になり変ろうとて

生きざまを晒す

枯れて朽ちるほどに

堪え忍ぶ本望を知り

偏にその脈を分かち得ん

それをも叶わぬ泡沫なら

然して

何も生まず

何も死せず

何を望み

何を望まざるか

いかにも屍となる






BGM:Ajico/波動


自由詩 『菩提樹の生けとし岬』 Copyright Leaf 2009-05-22 18:50:02
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