夜の函
水穏(みおん)

あ、また鍵かけ忘れちゃった。
まだクライ地下、皆、開放していく。
その音は、やけに耳に響いて
カチャリ
また一つ、カチャ
私だけ掛け忘れた。
ふと手を伸ばすと、
頭のてっぺんから、
どろりと白い液体
麦酒、日本酒の匂い
そして、アンモニア臭。



白い
ワンピースのスカート部についた黄色い染み
脚に滴り落ちるまだ熱い液体の感覚。
嗚呼、盗まれたんだわ。


二〇〇五年八月二十八日 三人合同誌『Memento-Mori』より


自由詩 夜の函 Copyright 水穏(みおん) 2009-05-21 17:18:37
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