偽善者は結局僕だった
こめ

僕ら互いに理解できず

すりきった体は

紅く染まっていたよ

わからないから手を離す

分かりあいたいから手をつかむ

僕はどこにいる?

さぁどこだ

今いる過去の渦のなか

さっきいた未来の幻影のなか

今いくよどこまでもあきたりない

己のが気が向くまま

天使がくれた羽根はもう

錆びて動かなくなっていた

知らないことが罪になるのなら

僕はなにもしらないことにしよう

すれちがう人波の中で

大切な物を盗まれてしまったよ

今逞しく気高くそれでも絶対的な強者は

愛を知らないまま

流れ星になって消えていった

拾ってくださいと書いてあった

段ボールの中では小さな仔猫が

精一杯に泣き

自らの生命を守ろうと必死になっていた

無駄な命はないとみんながいうけれど

今消えかかっている生命を救おうとはしなかった

みな親が駄目だとかアパートにすんでいるとか

そんなくだらない理由だけで

命を捨てていた

僕はそんな人間と同じだ

自分のことしか考えていない

そう思ったが

どうやら僕は自分が思った以上に偽善者らしく

その濡れた仔猫を優しく抱き

家路に戻ってしまった



自由詩 偽善者は結局僕だった Copyright こめ 2009-05-20 23:54:27
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