たまゆら
ask
こんなにつめたい夜のまんなか
あなたはなにをうたうのかしら
とおいところであなたはなにを
なにをおもってうたうのかしら
先ほどふったばかりの雨が
地面にくろぐろふたをするので
月も見えない空にむかって
おおきな穴があいてしまった
すきとおる線をひとすじに
わたしの頭は血などは流さず
ただただ泡がふわふわと
音を立てては消えるだけ
脱いだコートにしわくちゃと
寄ってしまった皺のこと
そのいっしゅんのしんじつを
そのいっしゅんのしんじつを
私の見つめる地点のようす
ことばはなにも告げないけれど
すべてはすぐに反転するし
ことばはなにも告げないけれど
凍えるグラスはそのなかに
無数のくうきょを持っているので
あわててそそぐ液体に
硝子はちいさく悲鳴をあげた
なんのことはない、このへやが
しずまりかえったふかい水の底
わたしはすぐに反転するし
ことばはなにも告げないけれど
こんなつめたい夜のまんなか
あなたはなにをうたうのかしら
とおいところであなたはなにを
なにをおもってうたうのかしら