たまゆら
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こんなにつめたい夜のまんなか

あなたはなにをうたうのかしら




とおいところであなたはなにを

なにをおもってうたうのかしら






先ほどふったばかりの雨が
地面にくろぐろふたをするので
月も見えない空にむかって
おおきな穴があいてしまった




すきとおる線をひとすじに
わたしの頭は血などは流さず
ただただ泡がふわふわと
音を立てては消えるだけ




脱いだコートにしわくちゃと
寄ってしまった皺のこと
そのいっしゅんのしんじつを
そのいっしゅんのしんじつを




私の見つめる地点のようす
ことばはなにも告げないけれど
すべてはすぐに反転するし
ことばはなにも告げないけれど




凍えるグラスはそのなかに
無数のくうきょを持っているので
あわててそそぐ液体に
硝子はちいさく悲鳴をあげた




なんのことはない、このへやが
しずまりかえったふかい水の底
わたしはすぐに反転するし
ことばはなにも告げないけれど







こんなつめたい夜のまんなか

あなたはなにをうたうのかしら




とおいところであなたはなにを

なにをおもってうたうのかしら


自由詩 たまゆら Copyright ask 2009-05-20 10:15:11
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