夢あそび
恋月 ぴの

パン作りに悪戦苦闘する教室の扉をそぉっと開くと
可愛らしい眼でこちらの様子を窺いだす

仲間外れされているとかの感情より好奇心が勝っているようで
親指を口に含みながらきょろきょろしてる
手足ひょろっと長くて結った髪の良く似合うお母さん似のお嬢さん

生地をこねる作業の邪魔とかしたら叱ってくださいね

優しい先生を囲んで数人の生徒さんと自家製酵母の香り
そんな家庭的な雰囲気と
おしゃまなお嬢さんの姿を一目見たさに

いつもなら三日ボウズのくせして半年も続いてしまったよ

教室の合間にトイレで用をたしたあと
誰かと話してる気配に誘われ北側の洋間を覗いてみれば
お気に入りの人形とおしゃべりしたり
なにやらお絵かきしている姿微笑ましかった

私にもあんなときってあったよね
美容院経営してた母の帰りを待ちわびながら
手垢ですっかりと汚れてしまったモンチッチを胸に抱くと
とっておきの内緒話に花を咲かせてみたりした

あれってなんだったんだろう

帰り際にお嬢さんがクレヨンで描いた絵を見せてくれた
焼きたてのパンの雰囲気よく出ていて

この絵のなかでお嬢さんはどこにいるのと問いかけてみれば

これがみーちゃんなの

お母さんそっくりなエプロン姿を指さした




自由詩 夢あそび Copyright 恋月 ぴの 2009-05-19 21:55:32縦
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