真夜中と君と
ウデラコウ

真夜中に君はスーパーに行くのが好きで

日付が変わるか変わらないかの瀬戸際に
もう誰も見やしないのに たいそうしっかりおしゃれをして

律義にエコバックまで持って 僕を連れ出すんだ

僕といってはもう眠くて仕方がないのだけど それでも君がいないのはいやで
着古したTシャツと履き潰したジーンズで君の後ろを追いかける

漆黒に溶けてしまいそうな君の黒いジャケットを
つかみたくてもつかめない僕は 置いていかれないように
いつもより大きくあるいて

夜空に漂う紫煙をぼんやりながめて
苦手なそれに 少しだけ咳をする

雨上がりの夜は 空がとても綺麗で
落ちてきそうな星の下を まっすぐ歩いて
目の前の背中が消えないように 消えないように 消えないように

そっと願いながら
なんだか無性に泣きたくなって

涙がこぼれ落ちそうになるのを必死にこらえると

君が振り向きもせずに


泣いてるの

って聞いてくるから
僕は慌てて 違うよって返すんだ

それでも君をごまかすことはできなくて
君がそっと僕の方へ伸ばす腕に
何も言えず そっとつかむんだ

何も言わない君
涙をこらえる僕



真夜中は静かに闇に溶けて
このままどこか知らないとこへ僕たちを隠してくれればいいのだけど

24時間のスーパーはすぐそこまで迫ってるから
僕は一度だけ目をこすって
また 空を見上げる

このまま君がずっと そばにいればいい

そんなおこがましいことを願いながら
掴んでいた君の袖を もう一度強く



掴みなおすんだ



自由詩 真夜中と君と Copyright ウデラコウ 2009-05-19 18:05:45
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