夜の四隅のために書いた詩
瑠王
いつもこんな距離だった。
君がまだ少女だった頃も、日の出を見た公園のベンチでも、電車で偶然会った時も。僕らは横に並んで座っていた。
僕らは小さな話を沢山並べて星に投げた。ひとつ話を終えると新しい星に向かって、また投げた。
そうやって横顔と横顔は決して向き合わないけれど、いつも同じものを見ていた。
それが嬉しくて、僕は目を見るのをやめた。
僕らが目をあわせるのはいつも、出逢った時とさよならの時にだけ。
花弁の一枚一枚がいつも違うものであるように、やがて同じ明日はやってくるのをやめた。
一度だけ。蜜蜂が花に寄り添ったのは、一度だけ。
背中合わせに笑っているのが好きだった。同じことを考えているのが手に取るようにわかるから。
きっと僕らにはその距離がちょうどよかった。だけど僕らは互いに一歩踏み出した。一度始まればもう止まることはなかった。
僕らが目をあわせるのはいつも、出逢った時とさよならの時にだけ。
それが哀しくて、僕は目を見るのをやめた。
僕の瞳の奥に、君は不在のまま。
あの頃と何も変わらずに、僕は君の目を見ることなく。ただ星に向かって石を投げる僕の横には、君の置いていった不在着信。
肩ごしのさよなら逹も、声になることなかった言葉も、この詩でさえ、夜の四隅にぶら下がったまま。