五月の夜
塔野夏子
五月の夜が更ける
上限を過ぎた月が
丘々を 森を照らし
小さなこの庭を照らしている
ほの甘い空気の中には
すでに夏の気配が かすかになやましく
ひそやかに 息づいている
室内では 夜の静けさに守られ
窓にほど近い白い寝台で
君が 眠っている
君は 夢をみている
夢のなかで ルージュをひく
それは おなじ色だ――この夜の青い闇に
絡みついて咲く 薔薇の花と
自由詩
五月の夜
Copyright
塔野夏子
2009-05-17 11:34:34