ロンダの青い空
うめぜき
ロンダの住む赤茶けた家は
アダレの街外れの丘の上にある
朝方、ロンダの澄んだ歌声が聞こえてくるのを
街の人は微笑みながら聞いた
※
アダレの街に徐々にネオンがともる頃になれば
メレンゲ婆さんの喪に皆が服し始めるのだ
空に浮く鉱山で、メレンゲ婆さんは人身御供となった
一度枯れた鉱山は、鉱物が取れるようになったのだった
しかし、そうなってからロンダはいつも家では1人だった
丘の上の赤茶けた石の家で
空がとても近くに見える屋根の上で
ロンダは1人ただ歌を歌った
※
ロンダはいつも同じ夢を見る
泣きながら空を駆け抜ける夢だ
ロンダの涙が
空気中で雪に変わりアダレの街に積もる
石畳の路で黒い警察官の手に落ち
パン屋の赤い屋根は少しずつ白く染まっていく
路上に停車している青い古びたクラシックカーにも
その傍、レコードの聞こえる窓辺から
子供たちが空を覗き込んでいるのだった
その夢では
ロンダは走り続け、いつか星座になるのだった
ロンダは星々を飛び石のようにして
ピョンピョンと跳ね
そのたびに星は崩れ
流星群のように世界中に散らばっていく
※
ロンダは泣きながら起きる
いつものことだ
さみしくて さみしくて
ロンダは屋根に上り、エントツに腰を掛け
歌を歌う
アダレの街に陽がのぼる
石畳の路が明るく照らされていく
そしていつものようにロンダの歌が聞こえてくる
朝8時
空を浮く鉱山では
多くの男たちとわずかな女たちが家族の為に今日も働いている
取り巻く飛行艇
やわらかな空
ロンダの歌声は彼らの耳をも潜り
大人たちは微笑みながら山を掘る
そしてロンダはそのことを知らない
そのことを知らないが
メレンゲ婆さんに聞こえるようにと精一杯 歌った
それは
まるで賛美歌のように 青い空に響いた