雨の夜の底で
朽木 裕
雨の夜って好きだなぁ
ソルティドッグ片手に呟く夜中の二時
ベランダの手すりには雨粒がいっぱいで
むきだしの足のウラに冷えたコンクリィトが気持ちいい
夜って水の底みたい
キレイに澄んだ水の底
静かに水も揺らさず沈んで朝を待ってる
音は夜が吸収していく この雨音すらも
水底なのに雨が降ってるなんておかしいな
アルコォルで火照った躯に夜風がやさしい
夜の天蓋をみて水面を想った
朝がくれば水はすっとどこかにひいてしまうのかな
そうして夜がくるたび沈むのだ
静かに静かに水底へ
ならばベランダでアルコォル摂取している私も水の中の住人だ
浮力なんてものはきっとないんだな
あるのは月の引力 死を想う気持ち
それらを孕んで夜の底にただ沈んだ