2cmの宇宙
nonya


雨が降り続く夜を
遮ってしまおうと
戸袋から雨戸を引き出しかけて
ふと 手を止める

視界の端で
何かが咲いていた

雨戸とガラス戸の隙間
わずか2cmの
薄っぺらな空間の足元で
羽化してしまった
揚羽蝶

切り取ったばかりの三角形に
光の粒子を混ぜた黄色と
紫がかった闇で描かれた斑紋
干からびた蛹の背中に
垂直に切り立って
身じろぎもしない真っ直ぐな命
おそろおそる屈み込もうとする
無骨な好奇心を寄せつけず
ただ ひたすら
そこにいる

どうして
気づかなかったのだろう
何回も
日常を開け閉めしたはずなのに

些細なことを嘲笑に包んで
道端に投げ捨ててきた報いなのか
紙切れ一枚のイメージの上で
月と星をもてあそんだ罰なのか

視界はますます狭くなる
足元に広がる幾つもの宇宙を
もう二度と
見出せなくなるほど


自由詩 2cmの宇宙 Copyright nonya 2009-05-16 18:51:42
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