2cmの宇宙
nonya
雨が降り続く夜を
遮ってしまおうと
戸袋から雨戸を引き出しかけて
ふと 手を止める
視界の端で
何かが咲いていた
雨戸とガラス戸の隙間
わずか2cmの
薄っぺらな空間の足元で
羽化してしまった
揚羽蝶
切り取ったばかりの三角形に
光の粒子を混ぜた黄色と
紫がかった闇で描かれた斑紋
干からびた蛹の背中に
垂直に切り立って
身じろぎもしない真っ直ぐな命
おそろおそる屈み込もうとする
無骨な好奇心を寄せつけず
ただ ひたすら
そこにいる
どうして
気づかなかったのだろう
何回も
日常を開け閉めしたはずなのに
些細なことを嘲笑に包んで
道端に投げ捨ててきた報いなのか
紙切れ一枚のイメージの上で
月と星をもてあそんだ罰なのか
視界はますます狭くなる
足元に広がる幾つもの宇宙を
もう二度と
見出せなくなるほど