しめったシーツ
百瀬朝子

胸が つんと 詰まる
まるで涙をこらえているみたいに つんと
こぼれそうなこの思いは なんだろう

真っ白いシーツ 物干し竿でなびいている
舞い上がる 太陽を包みこむように
ひるがえったシーツは 乾いている
笑いも涙も 何も 含んでいない
今夜 涙や汗で しめることも知らずに 舞い上がる

どれだけ涙を流しても 鼻の奥 つんとする 消えない
わけもないのに さみしい なんて言えない
夜 うずくまる形で横になって
押し潰されそうな心を抱えて 耐えている
朝はまだ来ない
しめったシーツを置いて 夢を見よう

この肉体を置き去りにすれば どこへでも行ける
空を飛ぶことも叶えられる
さよならをしたあの人にも もう一度
触れることだって許される
乾いたシーツのにおいがする

天気のいい日に 散歩するみたいに 目的もなく
目の前の草花には目もくれず
遠い日を見つめる
どこかの空で カラスが鳴いた

胸が つんと 詰まる
つっかえて取れない この思い
吐き出すには 足りなくて
だから もうすこし
大切にして 育ててみよう
朝が来る
しめったシーツを 干しにゆこう


自由詩 しめったシーツ Copyright 百瀬朝子 2009-05-15 20:53:14
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