マンゴーの花
光井 新

最後に会った友人がマンゴーを置いていった
初めて口にしたマンゴーに君は感動していた
もっと色々な物を食べさせてあげたかった 僕は後悔した

どうかしていたんだ
弱っていく君を見ていられなかったのかもしれない
思いつきか 殻から種を取り出して、水を張ったトレーに置いた

殺風景な病室に、小さな命が芽吹くと君は
その成長を何よりも楽しみにしていた
どんな花が咲くのかと、その事ばかりを気にしていた

あれから何年も経って ようやく花が咲いた
鉢を温室からベランダに出せば
何処からか蝿が集って来た

こんなにも臭い花を付けるだなんて
君は予想していただろうか

新しい妻に鼻をつままれながら
僕は君の匂いを思い出している


自由詩 マンゴーの花 Copyright 光井 新 2009-05-10 18:56:31
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