キップ
ルナ

朝、目が覚めたら
右の手のひらがチクンとした
キップだった
日付はちょうど1年前の今日
行き先は書いていなかった

チクン

今度は胸が痛かった
その日付を忘れるはずがない
忘れられる訳がない

私の大切な人が
永遠のさよならを告げて
旅立った日

会いたい
でも会えない

その人は
豊富な知識と
頭の回転の良さを合わせ持ち
ユーモアに溢れ
愛に満ち
傍にいるだけで幸せだった



このキップは
あの人に会える神様の贈り物?
私はペンを握りしめ
行き先を

書けなかった
私が会いに行けば
あの人は笑顔で私を
抱きしめるだろう
あの人は優しく私に
話しかけるだろう

でもそれは
あの人の決心を鈍らせ
あの人を困らせる
嫌な顔ひとつ見せずに
それが逆に辛い


窓の外からは
柔らかい日差しが
ウグイスの鳴き声が
優しい風と一緒に
流れ込む


私はキップを読みかけの本に挟み
少し薄手の服を着た








自由詩 キップ Copyright ルナ 2009-05-09 07:33:38
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