「旋律」
ベンジャミン

ゆびさきで
おそるおそるふれた
ぎんいろのフルートにうつる
じぶんがはずかしくて

おと
おとをかなでるなんて
ぼくにはできないだろうとおもった
くちびるをあてても
いきがながれるだけだったら
やっぱりはずかしい
フルートはきれい

ぎんいろ
それがきれいというよりも
りょうてのゆびでささえるだけの
こころもとないそんざいが
きれいだとおもった

おと
おとをださなくても
フルートのねいろはしっている
しっているねいろと
ぼくがかなでるねいろがちがったら
どうしようかとおもって
くちびるをあてても
いきをおくれなかった

それでも
ぼくのなかでは
たしかなせんりつがながれていて
それはどこかなつかしい
そんなきがした

フルートは
もうながいことしまったまま
クローゼットのおくに
あのころのこころのなかに
しまったまま

だけど
ときおりぼくは
まるでくちぶえをふくように
みえないフルートの

それににた
きれいなぎんいろの
とうめいなおとをふくために

それににた
きれいなことばをあつめて

そっと
ふく

 


自由詩 「旋律」 Copyright ベンジャミン 2009-05-08 02:39:32
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